鼻咽頭-耳管モデルを用いた嚥下障害・耳管開放症の診断シミュレーション

千葉 椋仁1, 濱西 伸治2
1東北学院大学大学院 工学研究科 機械工学専攻,宮城県仙台市若林区清水小路3-1
2東北学院大学 工学部 機械知能工学科 
发布日期 2026

  1. 研究・検討内容 嚥下障害および耳管開放症の診断において、鼻からの音入力や嚥下動作に伴う生体音の測定といった音響診断手法が試みられているが、音の入出力部位の選定や出力音圧の相関関係については十分に解明されていない。特に、疾患に由来する生体組織の剛性や減衰特性の変化が、伝播する音響特性に及ぼす影響の解明が課題となっている。本研究では、生体モデルを用いた数値シミュレーションにより病変に伴う組織物性の変化が音響伝播に与える影響を詳細に解析し、臨床において有効な音響診断手法および最適な測定・入力部位を検討・提案することを目的とする。
  2. COMSOLの使用内容 SolidWorksで作成した鼻腔・口腔・食道・耳管を包括する鼻咽頭-耳管モデルを導入し、COMSOL Multiphysicsを用いて周波数解析を行った。病変状態を再現するため、食道および耳管の物性値パラメータとしてヤング率およびレイリー減衰比(粘性特性)を変化させた条件を設定した。100〜4000 Hzの周波数範囲において、食道または鼻孔の片側から80 dBの基準音を入力し、音の伝搬挙動を算出することで、もう一方の鼻孔および耳管の外耳道側における音圧レベルの周波数特性を詳細に評価した。
  3. 結果の概要 組織の粘性変化と比較してヤング率の変化が音圧特性に対してより支配的な影響を与えることが明らかとなった。食道の物性を変更した嚥下障害モデルでは、鼻から音を入力した場合と比較して食道から音を入力した場合に音圧差が極めて顕著に現れ、特に高周波数帯域において明確な音響挙動の違いが示された。また、食道入力時には離れた位置にある鼻孔や耳管でも顕著な音圧変化が確認された。一方、耳管の物性を変更した耳管開放症モデルでは、音の入力部位に依存せず、鼻孔よりも耳管で直接音圧を計測した方が病変に伴う周波数特性の変化を高精度に検知できることが示された。
  4. 結論 本シミュレーション解析により、耳管開放症の診断においては耳管出口での直接的な音圧計測が非常に有効であり、嚥下障害の診断においては食道からの音入力および遠隔部位(鼻や耳管)での音響計測が実用的な診断手法として適用できる可能性が示唆された。今後は、気道を加えるなど解剖学的にさらに生体に近い詳細な形状モデルを用いた解析を進める予定である。

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