−10℃高度低下による上向放電誘発の可能性とCOMSOL AC/DCモジュールによる静電場解析

米田 稔1
1株式会社セイクン 
发布日期 2026

はじめに 上向放電は高構造物に重大な雷害をもたらすことがあるが、その発生条件については未解明な点が多い。−10℃高度は雷活動を特徴づける重要な指標である。本研究では、スカイツリーで確認した落雷データおよび静電場解析シミュレーション結果を用いて、−10℃高度と上向放電発生の関係について検討した。 −10℃高度と上向放電の関係(観測結果)東京スカイツリーにおける2012~2014年の落雷観測データを用いて,各落雷事例の−10℃高度と放電方向(上向・下向)との関係を調査した。 図1、表1より、−10℃高度が6,000mを超えると下向放電が優勢となり、8,000mを超える事例では観測された全ての放電が下向放電であった。 一方、−10℃高度が5,000m未満では上向放電の割合が高くなり、2,000m以下では観測された全ての放電が上向放電であった。 COMSOL AC/DCモジュール静電場解析 設定   3D静電場モデル 端子:10C 接地:スカイツリー、地面 下向放電端子の高度:8000m 上向放電端子の高度:1000m

結果 雷雲高度が低い(1000m)場合は、スカイツリーとの電荷相互作用が強くなり、構造物からの上向放電が生じやすい。 一方、雷雲が高高度(8000m)にある場合は、電荷強度が地上に及ぶ影響が弱くなり、上空からの下向放電が主体になる。 これは、観測データと一致しており、-10℃高度が低い場合(例:1000〜2000m)に上向放電が多く発生している事実と整合する。 結論 東京スカイツリーの観測結果とCOMSOL AC/DCモジュールによる静電場解析を比較した結果、−10℃高度の低下に伴い上向放電が発生しやすくなる傾向が確認された。